【学院の今】「高等学院 コロナ禍の奮闘記」 高等学院教務主任 24期 橘孝博

1973年(昭48)卒 24期 高等学院教務主任 橘孝博 C組 物理

高等学院 コロナ禍の奮闘記

                     
  濃厚接触、行動変容、変異株、職域接種など、コロナ禍ではそれまでの日常生活ではあまり聞いたことがない言葉が飛び交っています。耳慣れない言葉が使われだし、それまでにない概念が必要になるということは、私たちを取り巻く社会が以前とは異なる状況になったのだともいえます。そのコロナ禍で、日本の教育現場も大きな変化を求められています。高等学院も例外ではなく、過去にないさまざまな事態を経験しました。ここでは、昨年から現在までの高等学院の状況を、OBの方々にも少し紹介しておきたいと思い、筆を執ります。

 昨年2020年の2月28日に、政府が全国の学校に対して一斉に休校措置をとり、高等学院の生徒達にとっては長い春休みが始まりました。私たち教員は、生徒たちに春休み課題を与え、2ヵ月ほど後に迎えることになるオンライン授業の準備などで大変忙しくなりました。4月に入ると東京都の感染状況を考慮して、早稲田大学は教職員の大学・学校内への立ち入りを原則禁止としました。高等学院でも、打ち合わせや会議は完全にオンラインとなり、いわゆるテレワークの始まりです。幸い早稲田大学では何年も前から、高等学院生徒も使うことができるLMS (Learning Management System) が完備されていたので、生徒たちへの授業展開は、そのシステムを使って行うことができます。しかし、たまたま2020年4月は、早稲田のLMSが全面的に新しいシステムに入れ替わる時に当たっていました。そのために私たち教員は、新システムの使い方を学ぶための情報交換を、対面できない状況下でその不慣れな新システム自体を使って行うという、困難な作業を強いられました。 

 全国で感染が広がる中、2020年3月の卒業式と4月の入学式は、残念ながら中止となります。また、2020年度1学期の開始は非常に遅く、なんと5月11日が始業式でした。それから暫くの間、生徒たちは全く登校せず、自宅からPCやタブレットを通して仲間や教員の顔を見、LMSで配信されるオンライン授業を受けることとなりました。部活動もできません。コーチがトレーニング内容を夜にリアルタイム配信し、部員たちはPCモニターの前で身体を動かしてトレーニングするという活動で凌いだ運動部もありました。宿泊による校外活動などの学校行事も、もちろん全く行うことはできませんでした。特に新入生の1年生は、肌で感じる高等学院の様子が分からないまま、不安な中で暫く過ごすことになります。

 2020年6月18日からは、これも新しい言葉ですが「分散登校授業」となりました。つまり、学校内での生徒数密度を減らすために、出席番号が奇数の生徒と偶数の生徒を毎日交互に登校させました。教員は、同じ授業内容を2日繰り返すことになります。登校時の電車内などでの感染を避ける目的で、授業開始時刻を10時に遅らせる時差登校を取り入れ、通常50分で行う授業も40分で行いました。理科の実験や実習などをはじめ、多くの授業は50分授業を前提として設計されていますので、40分では内容を消化しきれないという苦労がありました。そのような授業形態が8月1日まで続いて1学期が終わり、1学期の期末試験は、夏休み中の8月下旬になんとか生徒たちを登校させて実施することができました。 

 2020年度2学期以降は、基本的には全員同時登校ができる状況となりますが、多くの期間は、まだ時差登校でした。2020年12月から全国を襲った新型コロナ第3波の時期には、初めて学院生に感染者が出ました。しかし冬休み中で登校しておらず、幸い濃厚接触者は出ませんでした。

  さて2021年度に入り、最初の行事である4月の入学式や始業式は参加者数密度を少なくする工夫をしながら、何とか生徒たちを登校させて実施しました。しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るった2021年5月の第4波は、学院生にも襲い掛かり、2つの部活動で生徒が数名ずつ感染してしまいました。当時の地域の保健所の判断は厳しいもので、マスクをしてソシャルディスタンスを保っていても、部活動の道具を共用した生徒は全員濃厚接触者として扱われました。そのため100名近い生徒が自宅療養・登校禁止措置です。

 また、部活動以外でも家庭内感染での陽性者が居た場合、その生徒のクラスは全員が濃厚接触者と判断されました。高等学院としては、登校できない生徒たちのために、各教室に授業をオンライン(ハイフレックス型授業やリアルタイム配信型授業など)で配信するための設備を新しく充実させて対応しました。そのような感染者・濃厚接触者が発生する状況を受けて、2021年5月末に、高等学院では感染者が出ていなかった中学部を除いて、高校1~3年生で約2週間の学年閉鎖を初めて行いました。

 その後は、高等学院内の感染者の状況に応じて、時差登校や学年閉鎖を行ってきました。そして、第5波が治まりだした2021年11月1日から、私たち念願の通常授業(8:40開始 [中学部は8:30] で50分授業)の形態に戻して学校教育を行うことができるようになり、現在に至っています。しかし、今後第6波が襲来するという専門家の予測もあり、まったく気が抜けません。

  現在のコロナ禍は、えらい時に生まれ合わせた災難と思うしかないのですが、そのような中でも元気のある高等学院生たちは、頑張って活躍しています。特に、2年連続で完全オンライン化となった学院祭を生徒たちはみごとにやり遂げました。YouTubeに自作の動画を配信して視聴者を集め、成功に導きました。情報機器の扱いに慣れている彼らは、素人とは思えない魅力的な動画作品を作ります。それらの配信は現在見ることはできませんが、通常授業となってから行われた2021年11月13日の学芸発表会の様子を写真紹介して、私たちの奮闘記を終えることにします。

教室での生徒発表風景。各教室にはICT設備が整備されていて、授業を欠席している生徒への授業同時中継もできます。

対面授業が可能となった今年の学芸発表会では、中学部の生徒たちが、学院の畑で収穫した野菜を披露しました。

講堂では学芸発表会日に音楽コンサートも行われ、生徒と保護者がソシャルディスタンスを保ちながら鑑賞しました。