【学院トピック】 「2019年度 学術研究奨励金 受給者インタビュー」 報告 46期理事 三輪洋靖
1995(平7)卒 46期理事 三輪洋靖 B組 機械
2019年度 学術研究奨励金 受給者インタビュー
同窓会学術研究奨励金をご存じでしょうか?この奨励金は学院生を応援する同窓会の重要な活動の一つで、授業や部活動とは別に個人で研究活動をしたいという学院生を支援する仕組みです。同窓会では2018年度までは年間60万円を,2019年度からは年間90万円を高等学院に提供しています。学院生は4月に1年間の研究計画を作成し、教務主任との面接を経て1件あたり1~4万円の研究活動費を獲得します。2019年度は中学部8名、高等学院23名が奨励金を支給されました。その研究分野は、歴史や経済などの文系研究から、科学技術、生物などの理系研究までとても幅広く、学院生の興味の多様さを感じられるものになっています。今回,その中から高等学院3年生の2名にインタビューをしてきました。
大峽優貴君 「打ち水が体感温度に与える影響」
1人目は大峽優貴君。グリークラブで合唱コンクールにも参加し、日々の合唱の練習に打ち込む一方、テクノロジーの基礎となる物理法則の美しさに惹かれ、自然現象や社会現象から得られたデータからその法則性や理論を見付けることに高い関心を持っているそうです。そんな彼が興味を持っているのが「打ち水」です。2年生の夏休みに打ち水の効果を実験で体験したのをきっかけに、研究奨励金では「打ち水が体感温度に与える影響」という課題に取り組んでいます。研究では、打ち水による気化熱を利用するだけでなく、風を送ること、体感温度を効果的に下げられるのではないかという仮説を立てました。夏休みにはアスファルトの地面に対し、打ち水およびファンによる送風の有無で、温度、湿度、不快指数、体感温度がどのように変化するかを条件ごとに実験的に確認したそうです。すでに、打ち水と送風の組み合わせによって、体感温度を効果的に下げられるという感触は得ており、これからは授業や部活動の練習がない週末を中心にデータ分析や考察、追加の検証実験を継続し、効果的な打ち水の仕方を見付けたいと熱意を語ってくれました。
富澤陽仁君 「強化学習を用いたコンピュータシミュレーションにおける二足歩行ロボットの重心位置最適化」
2人目は富澤陽仁君。1、2年生のときは物理が苦手だったものの、数学を勉強するうちに、証明をたどっていけば必ず理解できるように作られている数学の論理的な体系に惹かれ、最近は競技プログラミングの世界で数学とプログラムの実装力を日夜鍛えているそうです。そんな彼の夢はアニメのダンボール戦機に登場するAX-00という小型の2足歩行ロボットを開発すること。研究奨励金でも「強化学習を用いたコンピュータシミュレーションにおける二足歩行ロボットの重心位置最適化」という課題に取り組んでいます。この研究では、2足歩行ロボットの全身を倒立振子*1というモデルで数学的に記述し、体の重心が常に足裏に収まるように重心移動させて歩く静歩行という歩き方をシミュレーションできるソフトウェアを開発しています。このとき、重心の高さ、すなわち、腰の高さをどのようにしたら最も歩行が安定するかをOpenAI*2で提供される強化学習ライブラリを用いて学習させるそうです。開発はまだ序盤とのことですが、平日は7~8時間,週末は1日中研究に没頭することも多いそうで、夢のロボットの実現に向けた情熱を語ってくれました。
最後に、「学院に来て良かったと思うことは?」という質問をしたところ、大峽君は「自由な時間が興味のあること、やりたいことに気付かせてくれた」、富澤君は「受験がなく、やりたいことが自由にできた。よい友人と巡り会えた」と答えてくれました。
インタビューを通して、2人からは自分の興味や好奇心に真っ直ぐ向かっていく想いと行動力を持っていて、学院の自由な校風と相まって、いい意味での学院生らしさが脈々と受け継がれているのを感じました。残り数ヶ月の学院生活ですが、素晴らしい研究成果がでることを期待したいと思います。
今回、インタビューにご協力頂いた大峽優貴君、富澤陽仁君、教務主任の伊藤祐輔先生、吉原正同窓会理事長に感謝を申し上げます。
*1 倒立振子:振り子を逆さにしたように、地面を支店にしたリンクの上に質量を配置したモデル。箒を掌の上に載せてバランスを取る遊びも倒立振子の原理を使っている。
*2 Open AI:人工知能を研究する非営利団体。オープンソースにより安全な人工知能を開発することで、人類全体に利益をもたらすことをミッションとしている。
https://openai.com/