【学部生の活躍】 「早稲田で7年間アメフトに打ち込んだ君へ」 38期 箕輪淳一郎

 

1987(昭62)年卒 38期 箕輪淳一郎 H 組 一文

 

「早稲田で7年間アメフトに打ち込んだ君へ」

 

その1 ベアーズとの出会い

 震災があった年の暮れのことです。私は車で第三京浜を神奈川方面へ向かっていました。助手席には、前年に早大学院中学部の1期生として入学した息子のKが乗っています。この日は横浜で高校アメフトの全国決勝戦が行われます。当時の「早大学院米式蹴球部ベアーズ」は、秋の都大会5連覇中で、前年には24年ぶり2回目の全国優勝を果たしていました。その評判は中学部の保護者らにも伝わっていて、我々もぜひ観戦しようと駆けつけました。

 毎年、開催日時の時期から「クリスマスボウル」とも呼ばれ、全国の高校アメフト部員の憧れの舞台がいよいよ幕を開けました。普段は野球が行われるフィールド上で待ち受けていたスリリングな展開に、我々は手に汗を握ってベアーズを応援しました。0-3の最終クォーター残り9分、学院陣20ヤード付近から相手のタックルをかわしてベアーズのクォーターバック(QB)がロングパスを投げます。これが敵陣内を走り抜けるワイドレシーバーがナイスキャッチ。そのままエンドゾーンまで駆け抜けて80ヤードのタッチダウン!7-3と逆転に成功です。残り時間もお互いぎりぎりのせめぎあいが続き、結局10-10の同点。両校日本一という感動的なゲームを目の当たりにし、我々は親子共々アメフトの魅力に憑りつかれることになりました。

その2 ベアーズの一員として

 翌年の秋関東大会、ベアーズがクリスマスボウル進出をかけた「中央大学附属高校ラクーンズ」との試合では、前半の劣勢をものともせず逆転勝利。その勢いで関西開催となったクリスマスボウルにも勝利しベアーズは3連覇を達成。入部を控えたKも遠征に参加させてもらい歓喜の輪に加わりました。

 正式に入部した2013年もベアーズは強かった。当時の「父母の会」が制作した「イヤーブック」で確認すると、この年の部員は全99名でKの同期の新1年生はなんと40名!強い部活に憧れて多くの選手が集まり、これがさらに強い部を作るという相乗効果の表れでしょうか。調布市にある「味の素スタジアム」で開催されたこの年のクリスマスボウルも制覇し、学院ベアーズは全国4連覇を成し遂げました。

 改めて、先の2013ベアーズの「イヤーブック」を見てみましょう。高校1年生となったKが臙脂のユニフォームに袖を通した姿が載っています。現在の姿と比べてみると「細い!」の一言。この7年間、アメフトに没頭し、日々のトレーニングによる体型の変化に改めて気づかされます。

その3 秋の激闘

 連覇を目指す2014ベアーズですがその目前に強敵が現れます。クリスマスボウルの切符をかけて関東決勝を戦う相手は強豪「佼成学園高校ロータス」です。秋の都大会を制したこのチームに、ベアーズが挑戦者として挑む形で試合が始まりました。劣勢ながらも前半を3-7で踏みとどまり、特に力比べとなった4thダウンギャンブルでは相手の攻撃を2度とも見事に跳ね返すことができました。最終盤で残り2分を切っての逆転勝利をものしたベアーズが5年連続のクリスマスボウルへ進出しましたが、結果は関西学院に10-13で惜敗。残念ながら連覇は途絶えることになりました。

 再出発となった2015ベアーズの春シーズン。都大会は3年振り、関東大会は2年振りと、ともに優勝することができました。中でも永遠のライバルである「慶應義塾高校ユニコーンズ」戦は2試合とも勝利します。4月29日に定期戦として大学戦と併せて開催される「早慶戦」は18-6、関東大会(決勝戦26-18)ではディフェンスライン(DL)であるKが最優秀ライン賞に選ばれたこともうれしい記憶です。

 春全勝で波に乗るベアーズですが暗雲が漂ってきます。3年生QB2人が夏の怪我で欠場のまま、秋初戦の「駒場学園ファイティングゴリラーズ」戦を迎えてしまいます。ベアーズにとってこの強豪相手は、暗雲どころかゲリラ豪雨並みのピンチで、なかなか得点できないまま時間が過ぎていきました。0-3のまま後半残り2分、ラストチャンスのフィールドゴールが決まり土壇場で3-3の同点に追いつき、タイブレーク(延長戦)の末勝利をもぎ取ることができました。苦しい試合展開を予測してタイブレーク対策を綿密に行ったコーチ陣の作戦勝ちとのことです。

2015.11.23 関東大会

 ここから順調に勝ち続けたベアーズにとって「クリスマスボウル」への最後の関門、秋の関東大会決勝は春と同じ慶應義塾が相手となりました。今年2連勝しているとはいえ相手も指をくわえている訳ではありません。誰も予想がつかない激闘の幕開けです。前半を7-0でリードして終わるも、後半よもやのパントブロックタッチダウンを食らって追いつかれ、14-14でまたもやタイブレーク。表の守備で得点され後がなくなったベアーズだが、裏の攻撃で取り返し、最後のトライ・フォー・ポイントでサヨナラ勝ち。劇的な勝利を収めたベアーズがクリスマスボウルに6年連続コマを進めました。

 3年生になるKの高校ラストゲームはあの横浜スタジアム。4年ぶりに帰ってきましたが、勝利の女神は残念ながら2015ベアーズに微笑むことはありませんでした。それでも、東伏見グラウンドという恵まれた環境で、素晴らしいコーチ陣から指導を受け、先輩や仲間に囲まれて育まれた3年間の価値が損なわれることは断じてない。それは続く4年間の大学生活で「早稲田大学米式蹴球部ビッグベアーズ」に所属し、3度も「甲子園」の土を踏めたのだから。

 

京介へ。7年間よくやり切った。

これから続く人生は長い。楽なことばかりじゃないが、早稲田の仲間と培った7年を思い出して何とか乗り切ってほしい。

 

(編集部注)Kこと京介さんとは・・・・筆者の息子さん、箕輪京介さん (2016(H28)卒 67期 A組 社学)です。